ゲルマニウムの末路(?)

 もうずいぶん前に報道されてる件ですが,以前こういう記事を書いたりもしたので,一応リンクしておきます。

体に良いとうたうゲルマニウム使用のブレスレット国民生活センター

そのものズバリ,

テスト対象銘柄に表示されていたゲルマニウムの健康への効果は、文献調査及び製造・販売業者に対するアンケート調査を実施したところ、根拠となる科学的データが確認できなかった。ゲルマニウムブレスレットを購入する人は健康への効果を期待すべきではない。

と書いてありますね(太字強調は引用者による)。

 詳しく知りたい方には,上記ページの下のほうにリンクされてる pdfファイルをオススメしときます。

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不安の中を生きる

 久々の更新です。 さすがにここを訪れてくれる人も減ってきたようなので,心機一転モードという感じです。 ちなみに,この間,けっこうあれやこれやと忙しかったんですが,その合間に,写真のようなところに行ったり……ってなこともしていたのでした。(^^)
 
Xian
 



 さて,大上段にふりかぶったようなタイトルですが,何のことはない,以下の記事を紹介するというだけのことです:
 
うねやま研究室●新型インフルエンザの安心宣言から「安全・安心」を考えるFoodScience
 
"FoodScience" そのものは有料サイトですが,「うねやま研究室」だけは畝山さんの立場もあってか,掲載後1週間経つと無料で読めます(ハッキリ言って,オススメです。 バックナンバーもぜひどうぞ!)。
 
詳細はリンク先を読んでもらうとして,ひとまず2ヶ所だけ引用します:

 (ニューヨーク市が一般市民向けに出した情報でとっているのは(←引用者補足))何らかの危険情報に接したときに不安になるのは当然である、というスタンスです。そして、その不安を抱えながら正常な日常生活を送るのが大人にできることであり、(中略)。特に子どもはストレスの多い状況を理解する能力が未熟なために不安が強くなりがちなので、子どもには特別なケアを求めています。
 
(前略)(FDAやUSDAが行なう(←引用者補足))記者会見で説明しているのは政治家ではなく、問題についての専門知識を持った科学者たちです。この時出てくる「専門家」や「科学者」は、FDAやUSDAの職員である公衆衛生や食品安全全般への理解のある人たちであり、特定の分野だけに特化したいわゆる「専門馬鹿」でも、急遽呼び出されたほかの仕事を持っている人でもありません。(中略)行政機関に科学者がそれなりの地位で在職しているということの強みを感じさせます。そして議事進行を担当しているのはメディア対応やリスクコミュニケーションが専門の職員です。

前者は,「大人である」とはどういうことなのか?ということについて,ちょっと考えさせられる部分ではあります。 そして後者は,日本においてこれから重視していかなければいけない部分だと思います。 これまでも書いてきたことですが,いわゆる専門家の能力を生かせる場はたくさんあるはずだし,そういう場を作っていくことが(社会にとっても)重要と思うわけで。

 上の話と直接対応する話ではないですが,なにしろ現実にはこういうことも起こってたりするわけで,出来ることなら何かいい方向に変えていきたいもんです。 ちなみに,これについては,こちらや,あるいはこちらでも言及されていますが,特に後者は,日本学術会議会長という肩書きから来るカタい印象とは裏腹に,非常に読みやすく分かりやすい文章で,これまたオススメです。

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変わらぬ人気ぶり…

 既にあちこちで取り上げられていますが,

PSJ渋谷研究所Xの「校長先生たちに「水からの伝言」講演会」経由です。
う〜む,今ごろになって,こういうことがあろうとは……。
 
ということで,再掲しときます。 まだのかたは,ぜひ一読を:

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Silhouette Illusionと右脳・左脳

 けっこう前の話ですが,シルエット状態の女性が回転する動画が出てきて,それがどっちに回って見えるかで「右脳派」か「左脳派」かが分かるっていうのがネット上で流行ってましたね。 僕が初めて見たのは(毎度おなじみ)渡辺千賀さんの "On Off and Beyond" のこの記事からリンクされてたこのサイトなんですが,それ以降,ニュースサイトや直接の知り合いのサイトなんかも含め,あちこちで同じ動画を目にすることになりました。
 で,上記 渡辺千賀さんの記事の時点で既に「右脳/左脳に本当に関係あるかどうかは確かに疑わしいですねー。」なんて書いてあるわけで,実際それに近いエクスキューズをつけた上で件のフラッシュを載せているサイトも,けっこうあるようです。 なにしろ作品としてキレイだし,見る人や見方によって回転方向が変わるのは面白いので,横についてる説明は眉唾だと思いながらも紹介したくなる…っていう気持ちは僕にも分かります(というか,書いてるサイトが少なかったら,僕が紹介したかも)。
 
 で,いわゆる「右脳・左脳論」に照らしてみるなら,僕なんかは,直接知るひと10人に訊いたら10人が「左脳ばかりが肥大化して右脳がしなびてしまったようなヤツだ」と言われちゃいそうなんですが,残念ながら(?),僕はこれを見ていて,わりとすぐにどちら周りにも(かなり自由に)見れるようになってしまいました。 となると,さしずめ「めちゃめちゃ左右のバランスがとれている男」ということになりますね(エッヘン!)。
 
 
 なーんて言って終わりにすると,いろんな知り合いからブーイングが起きそうなので(^^;,以下,言わずもがなの話を。
 
 これは,(右脳・左脳というよりは)単に錯視の作品でしょうね。 紹介してる中には,既にそう書いているサイトもあります。 で,錯視と言えば…ということで,以前紹介したことのある北岡明佳の錯視のページ(北岡明佳教授(立命館大・文学部(知覚心理学)))を見に行くと,さすがというかなんというか,ここでも既に紹介されています。 「多義図形・反転図形」のページで「シルエット錯視」として賞賛の言葉とともに挙げられていて,ここでついに,元ネタが "WWW.PROCREO.JP" でフラッシュ作品の例として掲載されているこれであることを知りました。
 それにしても,元のサイトでも,"Silhouette Illusion" と言ってるだけで,右脳・左脳なんて話はありません。 誰がこれを「右脳・左脳論」と結び付けたのか,ナゾではあります。
 
 んでもって,更に言ってしまえば,ここで言っているような通俗的な「右脳・左脳論」には,ろくに根拠らしい根拠がない……というのが現実のようです。
 「『右脳』&『左脳』」で Google検索すると,もうそれこそ山盛りヒットしますが,(検索結果の上位のほうをちょっとだけ見に行った印象にすぎないけど,見た範囲では)それらのサイトで述べている科学的根拠らしきものが,多くの場合「うさうさ占い」などのいくつかのところの文章の引き写しのようで,ノーベル生理学・医学賞を受賞した Roger W. Sperry の分離脳研究を「権威付け」に使っています。 しかし,例えば,Wikipedia「ロジャー・スペリー」の項「脳機能局在論」の項(特に,その中の「右脳・左脳論」の部分)を併せて読めば,世間に流布している「右脳・左脳論」はほぼ迷信に近いものと言っていいと判断できるのではないでしょうか。 「右脳・左脳論」の部分から引用すると:

  • 左半球全体が論理処理のために活動しているわけではない。また左半球だけが論理処理をしている根拠は無い。
  • 右半球全体がイメージ処理のために活動しているわけではない。また右半球だけがイメージ処理をしている根拠は無い。
  • 「右脳を鍛える」と称する訓練等があるが、それによって「イメージ能力」や「創造性」が向上し、それが右半球の神経活動と関係しているという科学的根拠は基本的に無い。
  • 脳機能イメージングでは神経接続関係を調べられない。右半球と左半球に活動のピークが認められる場合でも、「右脳と左脳が協調して働いている」といった論の根拠にはならない。

「右脳・左脳論」を載せてるサイトでは,左右の違いだけでなく「実際には右脳と左脳が協調して働いているのだから,両方をバランスよく鍛えることが大切」なんてことが書いてあったりしますが,上の記述はその点も含めてバッサリ!って感じです。
 ただ,この Wikipedia の記述では,「この説でもちいられる左脳、右脳という用語からして学術用語として用いられることは基本的になく」とありますが,ちょっと調べてみると,(学術用語としてではないかも知れないけど)専門家と目されてもおかしくないような人も使っていたりして,それがこの言葉への「お墨付き」的に機能して話をややこしくしている面があるように思います(→下の追記参照)。 更に,「医学博士」の肩書きを持つ人がこんな記事を書くに至っては,(まったく無根拠な話じゃない部分も含まれてるのかもしれないけど,それでも)ちょっと困ったなー……という気がします。
 
 まあ,ここで言う「右脳・左脳」は人体の脳とは関係なくて,たまたま脳という文字が使われた架空の概念をもてあそんでいるだけだと思うことにすれば,それを使った占いで楽しんだりすることなんかに特に目くじら立てる必要もないかな……とは思います。 実害があるわけじゃないだろうし。 ……などと思っていたんですが,あにはからんや,この記事を書くにあたってあちこちクリックしているうちに,かなりイタいサイトにぶつかったりしてしまいました。 ここではそれをいちいちあげつらったりはしませんが,ああなると「無害」とは言い切れないよな〜〜。
 それから,幼児教育系のセールストークなんかにも,この手の話が潜んでいたりするようなので,注意が必要でしょう。 見方を変えれば,アヤシイ教育業者を見分ける判断材料の1つにはなる……かな。
 
 
[追記(2008/05/10)]
 例えば,4/16付けでの JST(九州大学・NIPS共同)のプレスリリース
なんかがまさにそうで,確かに本文には「右脳・左脳」という言葉は出てこないんですが,見出しやリード部分では思いっきり使ってしまっています。 また,本文においても通俗的な「右脳・左脳」論を肯定的に紹介しているとしか読めない部分があり(「重要な働きをする」という,やや曖昧な言い方で逃げを打っているつもりなのかもしれないけど),ちょっとマズイんじゃないかと思ったりします。 プレスリリースだし,しかもJST が絡んでいるから,余計に「一般の人に分かりやすく」とか「自分たちの研究に興味を持ってもらえるように」とか思ったのかもしれないけれど,結果的には JST が「右脳・左脳」論に肯定的に言及した(=ある意味,お墨付きを与えた)と見做されても仕方ないことになってしまってるわけで,こういうのは,専門家という立場からの発表としてはちょっと無責任なのではないかと感じます。(ちなみに,この成果が発表された "PLoS ONE" の本文をざっと見た限りでは,そういう記述はありません……まあ当たり前だけど。)
 
(注)JST(独立行政法人 科学技術振興機構)は,言うなれば科学技術に関する国家プロジェクトの元締めみたいなところです。

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HIV否定論と南アフリカ

 以前から,ネット上の幾つかのサイトで,南アフリカ共和国(以下,南ア)の Thabo Mbeki 大統領が,ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が後天性免疫不全症候群(AIDS)の原因であることを否定し,HIV 感染対策を(事実上)遅らせているという話を目にしており,ちょっと気になっていました。
 
 で,気になっていたなどと言いながら,実のところ,特に調べたりはしていなかったわけなんですが,最近になって,反進化論関連の詳細なウォッチを続けている「忘却からの帰還」で「AIDS再評価運動」に関するまとまった論文が採り上げられたので,紹介しておきたいと思います:

「再評価運動」というと“なんのこっちゃ!?”ですが,読めば分かるとおり,要するに,AIDS が HIV によるものであることを否定する人たちの運動のことであり,Kumicitさんが書いているとおり「HIV否定論」と呼ぶほうが分かりやすいように思います。
 
 なお,「忘却からの帰還」でこの件が採り上げられるのはこれが最初ではなく,冒頭で書いた南アについても詳しい記事があります。 興味のあるかたは,こちらもぜひ:

 う〜〜む,それにしても,読めば読むほど困惑させられる問題です。
 もちろん,日本において「HIV否定論」が広く受け入れられることはないでしょう。 これを受け入れることは,例えば「薬害エイズ問題」の存在自体を根底から否定することになるわけですから。 (逆に言えば……あまりに皮肉な見方かも知れませんが……あのような不幸な出来事があったからこそ,我々は「HIV否定論」のようなものに対して冷静な対処が出来る,とも言えるのかもしれません。)
 
 それにしても,例えば「社会実情データ図録」のこの記事でも示されているとおり,南アにおける AIDS 感染率は世界でも有数の高さであり,まさに「AIDS 対策 待ったなし」の状況にあります。 そのような国で,国のトップの指揮によって堂々と,まともな対策にむしろ逆行するような方向性が打ち出されている……という事実は,なんか,今の時代の出来事のようには思えない。 全くもって「困惑する状況」としか言いようがありません。
 国際世論の反発を受けて,Mbeki大統領も,最近になってAIDS 対策について若干軌道修正したようですが,そうは言っても基本的なスタンスは変わっていないようですから,今後どうなるか,気になるところではあります。

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頂上を高くするには裾野も広いほうがいいよね,という話(なのか?)

 少し前の「余丁町散人の隠居小屋」のこの記事で知った話なんですが,NHKのテレビ番組「クローズアップ現代」4月11日には,国際科学オリンピックのことが採り上げられたそうです。 僕は観ていないんですが,どんな内容だったかというのを番組のサイトから引用すると,

4月11日(水)放送
苦戦する日本 科学オリンピック

今、日本の科学技術力の将来を危ぶむ声が高まっている。毎年夏、世界各国の若き秀才が競う「国際科学オリンピック」(数学、物理、化学、生物など)で苦戦を強いられているからだ。この勝敗が次世代のITやバイオテクノロジー、半導体技術の勝敗に関わると、国をあげて理系人材の発掘・育成に力を注ぐ中国は、去年、全科目で1位、韓国は3位以内。対して日本は数学と化学が7位で物理や生物は20位以下。背景には、理系に秀でた人材を育成するシステムが無いことや、実験軽視・知識重視の受験教育の弊害が指摘されている。(以下略)


 これについて,上記「余丁町散人の隠居小屋」の記事では,2006年の実際の順位も書かれていて,

(前略)それにしても、2006年の結果には驚いた。順位は:

 1. 数学:中国、ロシア、韓国、ドイツ、米国
 2. 化学:中国、台湾、韓国、ロシア、台湾
 3. 生物:中国、タイ、台湾、韓国、米国

上記に物理を加えたニッポンの結果は:

 1. 数学:7位
 2. 化学:7位
 3. 物理:20位
 4. 生物:27位

負けている。中国とか韓国に。(後略)


とあります。
 
 さて,これだけ見ると,「日本はダメだな〜。 科学技術立国なんて全然じゃん。」と溜め息のひとつもつきたくなってしまうかも知れませんが,実を言うと,現実はそういう「情けない話」とは大いに様相が異なっているようです。
 まず,Wikipediaの「国際数学オリンピック」の項を見るとこれまでの日本の順位が書いてあり,2006年の7位は過去最高の成績であることが分かります。 同様に,「国際化学オリンピック」の項によると,順位こそ記載がありませんが,2006年の金メダル1・銀メダル3という成績はやはり過去最高です。 国際生物学オリンピックにはまだ2回しか参加しておらず,しかし,ここでも,2006年には,初参加の 2005年よりも日本人メダリストが増えています。 そして,国際物理オリンピックに至っては,2006年が初参加です。
 年々順位が下がって尻すぼみ傾向にあるというならいざ知らず,これを「苦戦を強いられている」と言い「科学技術力の将来を危ぶむ」と評するのが適切なのでしょうか? むしろ,過去の成績を踏まえれば,数学はじめ 2006年の戦績はなかなかのものと言うべきでは? もちろん,まだ上を目指す余地があるし,目指すべきでしょうが……。 上記「余丁町散人の隠居小屋」の記事のコメント欄にも,

く・・・苦戦とは・・・国際数学オリンピックの7位ってのはたしか過去最高ですよ。何が問題なんです?話の流れを読むと、「昔は実力が高かったのに今はこんな順位になってしまっている」と言いたげですが(NHKがですよ)、日本は昔から平均的な数学力は高かったですがずば抜けた人は少なかったはずです。国際数学オリンピックに参加し始めたのが20年くらい前だったと思うんですが、最初は全然歯が立たなかったんですよ。金メダルが二人なんて、最初のころからは考えられないです。(中略)
国際数学オリンピックは若き天才がチャレンジする場であり、科学技術力だとか経済だとかそんな俗世間とは関係ない話のはずですよ。

というコメントがあり,余丁町散人さんも態度を和らげていたりします。
 ちなみに,Wikipediaによると国際数学オリンピックは「ほぼ高校2年生までの数学知識で解ける構成になっている」とありますが,国際物理オリンピックは「問題は大学院入試レベルの物理の範囲から出題され、日本の高校生が既習でない分野には、特殊相対性理論などが含まれる。」とあり,「国際科学オリンピック」とひとくくりに言っても,その方向性は分野によって違っているようです。
 
 まあ,何がきっかけであるにせよ,科学に関する育成システムに力を入れてくれるというなら,それはそれで悪くない話ではあります。 しかし,育成問題が持ち上がる一方で,その先の問題と言うのもあります。 同じ番組について書かれた「五号館のつぶやき」のこの記事を見ると,

 番組では、日本にも諸外国と同じくらいの比率で、科学における天才は出現しているらしいということはわかりました。当然のことだとは思いますが、同じ日本人としてなんとなく安心しました。

 しかし、科学オリンピックでの成績は振るわず、さらに悲劇的なことに科学オリンピックに出るような人材が、その後科学者になることはそれほど多くなく、医者になるか、金融などの企業にいわゆる「文系就職」しているというデータが出ていました。番組では、驚くべきことにというようなニュアンスで、医者や金儲けに走る科学オリンピック経験者のことを取り上げていましたが、私からみるとあまりにも当然な結果で、それを驚いたり、悲観したりしている「大人」たちのほうが異様に見えました。


実際問題として,効果的な育成があったとしてもその先がいい生き方につながるようでないと,以前採り上げた「ポスドク1万人計画」のときと同様,ノセられた方がバカを見るということになりかねません。 そして,現状,彼ら優秀な人たちにとって,現在のいわゆる理系職が魅力的に見えないというのも,いかにもありそうな話という気がします。 もしそうであるならなおのこと,「育成」の問題は,その先という観点とセットで考える必要がどうしてもあるということになるでしょう。
(そして,いつもこの Blog で書いてるようなことではありますが,僕は,ここで言う「魅力」というのは「給料」とイコールではないだろう,と思っているわけです。 無論,金銭が重要なファクターであることは言うまでもないのですが。)
 


 ところで,なぜ周回遅れだと思いながらも,2週間近く前の番組の話を持ち出してきたのかというと,asahi.com のこのニュースがきっかけです:
 
ロシア国民の3割、天動説信じる 「恐竜時代に人類」も
2007年04月22日15時18分

 「太陽は地球の周りを回っている」—。ロシアで国民の約3割がこう信じていることが明らかになり、関係者の間に衝撃が広がっている。有力紙イズベスチヤがこのほど、全ロシア世論調査研究所から入手した調査結果として伝えた。

 調査はロシアの153都市で、1600人を対象に基本的な科学知識を試す形で行われた。

 この結果、天動説を信じている人は28%に上った。ほかに「放射能に汚染された牛乳は煮沸すれば飲んでも安全」との回答が14%、「人類は恐竜時代に既に出現していた」との回答が30%に上った。 (以下略)


「はてさて,」と,この記事を読んだ僕は思ったわけです。「同じ調査を日本で行なったら,どうだろう?」
…と思ったら,全く同じようなことが既に「[間歇日記]世界Aの始末書」のこの記事で採り上げられていました:

この記事を読んで、「やっぱり、ロシアは遅れているなあ」などと思っている日本人がおったとしたら、怖ろしいほど現状認識の甘い人だと言わざるを得ない。

 それにしても、さすがはスプートニクやボストークで人類の宇宙開発をリードした国だけのことはある。「放射能に汚染された牛乳は煮沸すれば飲んでも安全」と回答した人がたったの14パーセント「人類は恐竜時代に既に出現していた」と回答した人がわずか30パーセントだというのだから、驚異的に科学民度の高い国である。この二問なら、任意抽出した日本人は、まず確実にロシアに負けるとおれは思う。


残念ながら,僕も(そうならないことへのかすかな望みを抱きつつも)この意見には同意せざるを得ないです。 この2問なら日本人はロシアに負ける可能性が十分あり,他の問題が何かは知らないけど,たぶんトータルではどっこいどっこいということになるんじゃないでしょうか。 先日,アメリカでは相変わらず進化論の普及率が低いというニュースもありましたが,そうしたことを加味して考えても,(残念ながら)日本が他の国を笑えるほど高い位置にいるわけではないだろうと思います。
 上記[間歇日記]の記事でも言及されているとおり,以前から「科学技術への関心は日本が先進国中最低レベル」という調査結果も報道されたりしてるわけで,その意味においても,日本がエバれる状況にないことは確かでしょう。
 
 もし,頂上が高い山は裾野も広いというような言い方がここでも成り立つなら,こと科学技術について日本人が自国民に世界最高峰の頂きを要求するのは,はなはだ身勝手だということになります(国際科学オリンピックの成績についても,同じことが言えるのかも知れません)。 日本が科学技術立国でやっていくのだとしたら,これをなんとか変えていかなければいけないことになりますが……う〜〜む。

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環境ホルモン濫訴事件 判決言い渡し

 以前の記事でも採り上げた環境ホルモン濫訴事件ですが,判決が言い渡されました。 詳しくは「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」をご覧ください。

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フローレス人論争は次の段階へ?

 果たして新種なのかどうか,まだまだ論争が続くフローレス人(以前書いた記事はこちら)ですが,「科学ニュースあらかると」によると,新種説に新たな援護射撃が加わったようです。

# 「ホビット」達はやはり人間とは別の種だった (科学ニュースあらかると)
 (ちなみに,もとの記事はこちらです。)
参考までに,これまでの経緯は,[ EP: end-point 科学に佇む心と身体Pt.2]
# まだまだ続くフローレス人論争
# 炎上続行:まだまだフロレス原人は新種じゃない
の2つの記事に,見事にまとめられています。

 以前の記事でも採り上げたとおり,個人的には,新種であってくれるほうがワクワクする話なので,そういう決着にならないかと思っているわけですが,もちろん,そのことと,本当はどうかということとは,全く別の話です。
 
 追加の発掘調査をする許可も下りそうだということなので,まだまだ新たな展開が楽しめる可能性が高まってきましたね。 ドラマの続きに,期待大です。

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侠気のモト

 やっぱりこのニュース↓を無視するわけにはいかないでしょう(^^;。
 
 # オス誕生のカギ、「オトコ気」遺伝子を発見 (YOMIURI ONLINE)
 
わははは(^o^)  ……しかし,言うに事欠いて "OTOKOGI" とは。
(あ,文句言ってるんじゃないですよ。 内容をそれなりにちゃんと表わして(って,ちょっと飛躍しすぎという感じもするけど(^^;),なおかつ覚えやすい……もしかしてスゴくいいネーミングなのかも(?)。)
 
 Current Biology 誌の論文の中までは残念ながら見れないので,実際にどういう記述がされてるのか分かりませんが,それはともかく,こういうのを見ると,普段あまり気にせずに使っている外国語の固有名詞(とりわけ発見者に命名権があるようなもの)には,その国の人が見たら笑っちゃうようなものがあるんじゃないか?と思ってしまいます。 ……いや,それが不謹慎だとか言いたいわけではなく,そういうのを知って一緒に笑いたいな〜,などと思ってるわけなんですが。
 
 
[追記(2007/01/28)]
リンク先の記事の置き場所が変わったので修正しました。
(でも,なぜ「医療と介護」カテゴリーなんだろう?)

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時代はプラチナ微粒子らしい

 以前も紹介したことのある "Do you think for the future" のちょっと前の記事に「プラチナスチーム美顔器?」というのがあります。 去年の秋ごろゲルマニウムの話を書いたこともあって,これを読んで,つい「今度は白金かい!?」と早合点してしまったんですが,「今度は」というか,実はけっこう前から話題になっているようで,相変わらず自分の感度の低さを感じます(^^;。 で,ゲルマニウムのときは,その説明には(ハッキリ言って)意味がなかったのに対して,この白金の場合,状況はちょっと異なっているようです。
 
 まず,美顔器の話をちょっと離れて,記事中に紹介されてる「白金ナノコロイド」を事業化した株式会社シーテックのサイトを見に行くと,なんとタイムリーにも(?)「2006年9月1日をもって、『株式会社シーテック』は『アプト株式会社』に営業譲渡されました。」とあります。 で,そのアプト株式会社のサイトを見に行ったんですが,正直なところ,ワケが分かりません。 「健康に悪影響を与える活性酸素を除去することで、健康促進をはかります」だそうですが,う〜む……。 前身であるシーテックのサイトが同内容だったのかどうかは分かりませんが,例えば,高城史子さん(大阪大学 サイバーメディアセンター)の< 日記のようなもの.>の「8/28 (Mon.)」の項(個別記事へのリンクがはれないので,スクロールして探して読んでください)を見る限り,似たり寄ったりの内容だろうと想像されます。
 
 アプトのサイトにもあるとおり,白金ナノコロイドそのものは,宮本有正教授(東京大学 先端生命科学)の研究がもとになっていて,こちらもアヤシイのかと思いたくなるんですが,「水商売ウォッチング」の中の記事「『還元水』と呼ぶのはもう止めにしないか」を読む限り,研究そのものはかなり真っ当(少なくとも,真っ当だと研究者から判断される程度には真っ当)なものであるようです(もちろん自分で研究の中身を調べて判断すべきですが,またしてもそこまでやってないので,この僕の文章はあくまで「印象」程度のものだと思ってください)。 となると,アプトはどうか知らないけど,シーテックは産学連携ベンチャーの会社だったはずで,それがこんなのでいいんだろうか? 極めてナゾだ……。
 実際,「白金ナノコロイド」で Google検索すると,健康グッズ販売サイトが山ほどヒットしますが,東大教授というありがたいお墨付きがあるせいか,ほとんどのサイトでそれを前面に出しています。 例えば(たまたまGoogle検索で上位に来る)このサイトを見ると,

●白金ナノコロイドとは?

白金ナノコロイドとは、白金を2ナノメートル(ナノは10億分の1)という極小の粒径にした素材。東京大学大学院の宮本有正教授らの研究によって開発されました。CoQ10など、従来、抗酸化作用があるとされる素材で除去できない活性酸素も除去でき、すべての活性酸素に効果があります。また、体内にある限り、半永久的に働きます。


なんて書いてあります(他のサイトもほぼ同じようなことが書いてあることが多いようです)。 アプトのサイトにはここまで踏み込んだ効能は書いてないんですが,シーテックの頃のコピー&ペーストなんでしょうか? またしても出所がよく分かりません。
 
 白金という材料そのものは,触媒作用を持つ物質としてポピュラーだったりするので,「活性酸素を失活させるような何らかの化学反応を促進する」なんて話があったとしても不思議とは言えません。 微粒子になれば,その量に対して表面積に関わる部分が大きくなるので,触媒作用という点では有利でしょう。 ただ,美顔器にしろ,ナノコロイドにしろ,ちょっと気がかりなのは,その人体における移動の仕方や働きがちゃんとは分かっていないこと,それから,その安全性が不明なことです(←これら2つは別個の問題とは言えませんが)。 これらの問題については,上記「『還元水』と呼ぶのはもう止めにしないか」でも述べられています。 要は,白金ナノ粒子の薬理効果にしろ,副作用にしろ,研究はまだ始まったばかりであり,クリアしなければいけない問題がたくさんあるということです。 重要な指摘と思える部分を引用しておくと:
 動物実験で結果が出ていることは確かだとしても、副作用が生じないかといったことは、これからの研究を待たなければならない。なお、筋萎縮性側索硬化症や脳梗塞は、それなりにクリティカルな病気であり、これらに対して治療効果が期待できることを以て、健康飲料や健康食品に白金ナノ粒子を使おうと考えるのは、やはり現段階では勇み足と言うべきだろう。一応はそれなりに健康な人に対して効果が出るほど使うのは、副作用が未確認である以上危険だし、効果が無いほど微量なら、今度は使う意味がない。せっかくまともな薬理作用の研究が始まっているのだから、この流れをゆがめるような製品開発をすべきではないと思う。

(補足として,同じく「水商売ウォッチング」の掲示板のこの発言このスレッドも参照してください。)
 安全性に関する懸念はここなんかでも述べられていますが,例えば,「体内にある限り、半永久的に働きます」と言うけど,これって,もし副作用があった場合,体内にある限り副作用も半永久的に続くということになるわけで,必ずしもうれしくないんじゃないでしょうか。 白金は体内で消化できるわけじゃないんだから。
 
 さて,ではアプトのサイトに安全性について何も書いてないかというと,そうではなく,以下の記述があります:
中でもその一種である白金ナノコロイドは食品のみならず広く使用が認められています。

これ,本当でしょうか?? 財団法人 日本食品化学研究振興財団のサイトにある既存添加物名簿収載品目リストには「白金」はあるけど,いまだに「白金ナノコロイド」はないんですが,情報が古いのでしょうか? ……これは全く僕の想像でしかありませんが,恐らく今でも,状況は "Do you think for the future" の記事「ナノコロイド白金入りガム」の頃と変化なく,許可されているのは「白金」であって「白金ナノコロイド」ではないのでしょう。 この想像が正しいのなら,上の引用部分はちょっと問題ありという気がします(→下の[追記]参照)。
 
 また,山ほどヒットする販売サイトでも安全性についての記述が見られます。 例えば,このサイトを見るとそのものズバリ「安全性」という項目があって,
(前略)
3. 金属蓄積についても、半減期(体内に入れた後50%になる時間)は25.7時間で、約1週間で体外に排出されます。
4. 白金は金属そのもので、シスプラチンという制癌剤に使用され、副作用のある白金イオンとは全く異なります。
5. 医薬部外品申請に必要な全ての安全性実験を終了しており、問題は全く出ておりません。

と書いてあります。
4も若干問題ある表現ですが,それよりも,3と5の情報元がよく分からないのが問題です。 アプトの社長である岡山峰伸さんのブログの中のこのページを見ると,「プラチナナノコロイドが載った学術誌はあるのでしょうか?」という質問に対して「現在論文投稿中です。」と答えていて,それが今年の5月だということを考えると,5に関してはちょっと心もとないように思えます。 更に,同ブログのこの記事を見ると,基本的に行なっているのは動物実験であり,ヒトに当てはまるかどうかは必ずしも確かでないし,(記事中の表現を素直に受け取るなら)25.7時間という半減期を議論できるような検出量でもなさそうです。 また,白金微粒子がどうやって吸収され,どうやって体内に運ばれるのか,吸収率が低いと言ってもどこかの部位に選択的に存在したりしないのか……などなど,次々と疑問がわいてきます。 ……もっとも,同ブログのこの記事では,自社のデータ量に自信を表明しています ……だったら小出しにせずにちゃんと開示して欲しいという気がしますが。
 白金ナノコロイド商品は既にかなり出回っているようですから,アプトにしろ宮本さんにしろ,ぜひデータを示して(どこまで分かっているのか/分かっていないのか)しっかり説明していただきたいと思います。
 
 とまあ,ごちゃごちゃ書きましたが,ネット上の記事をざっと眺めるだけでは分からない点が多々あります。 しかし,どうやら,少なくとも「安心しきって大丈夫」というようなものではなく,長期利用による副作用などのマイナス面がこれから出てきても決しておかしくない,というのが現在の状況のように思えます。
 現時点での僕個人の印象を言うなら,(とんでもない量を摂取しない限り)重大な問題が生じる可能性は低いだろうという感じを持っていますが,これはあくまでマクロなサイズの白金に対するイメージの延長から出てくる「感じ」だけであって,何の根拠もありません。 また,問題もない代わりに,健康な人にはほとんどご利益もないんじゃないかと思わないでもありませんが,それならそれで一過性のブームで終わるだけだから大問題にはならないでしょう。 ただ,その一方で,まかり間違って体内のどこかに蓄積されたりしたらヤだなという懸念も心のどこかにあります。 ……僕自身は今のところ白金ナノ粒子入りの水にカネを出そうという気もないし,だからこそこんな風に軽くみていられるのかも知れませんが,一般論として,プラス面しかないというような話はアヤシイわけで,もし強力なご利益があったら,(摂取量によっては)強力な副作用も覚悟しないといけないんじゃないかとも思います。
 いずれにせよ,こういったものを試そうという方は,まだ不明な部分が少なくないこと,だからもしかしたら大掛かりな人体実験に参加することになるのかもしれないということを頭の片隅において,期待されるご利益とよく比べた上でどうするか決めることをオススメします。 もちろん,今回書いたような話なんか一笑に付して,「そんなことを気にしていたら,アンチエイジングは実践できないよ!」というのも,また1つの考え方なのかもしれませんが(^^;。
 
 
 
[補足]
 「同じ物質なのに,なぜ“白金”と“白金の微粒子”とを区別しなければいけないのか?」という疑問を持つ向きもあろうかと思いますが,実は,それは最近の流行であるナノテクノロジー(ナノテク)の本質部分に直接関わる話だったりします。 ナノテクの重要な柱の1つが,「モノの大きさがナノ(10のマイナス9乗)のレベルまで小さくなると,マクロな大きさのときとは違った性質・機能を持つようになるのではないか」という考え方です(余談ですが,これは「メゾスコピック系」と呼ばれる研究領域とオーバーラップする考え方です)。 この指針に従って何か新しい性質やら機能やらを実現できたとしたら,それは当然もとの(マクロな)物質とは別のものとして扱わなければいけないでしょう。 この考え方に基づくなら,ナノのサイズになったら安全性は再度検討しなおさなければいけないわけで,実際,世界的にナノサイズの微粒子の安全性について,それを実用化する前に調べるべきという動きが高まっています(この動きはヨーロッパが先行,日本は早めの実用化を重視していたため出遅れています。 この記事などを参照)。 ……とまあ,早い話が,(マクロな)白金の性質と白金ナノ粒子のそれとは違うかもしれず,だから,少なくとも何らかの検討を経ないうちは「違うモノだ」という前提で考える必要があるというわけです。
 
 更に蛇足ですが,活性酸素が老化に関与しているという話自体,必ずしも確立したものではないようです。 例えば,Wikipediaの「活性酸素」の項を見ると,最近の研究で否定的な結果が得られていることも述べられています。
 ……それにしてもちょっと疑問なのは,生体において起こる(生存に必要な)化学反応の中には,その過程において酸素ラジカルなどの活性な酸素が生じたり,更にそれが消費されたりすることが必要な場合も多々あるんじゃないか,ということです。 本当のところ,どうなんでしょう? もしそうなら,闇雲に何でもかんでも活性酸素を減らせばいいってもんじゃない,という話が出てきてもおかしくない,という気がするんですが。

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