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ヴィルヘルム・ハンマースホイ展

 で,先週の3連休に行ったものの1つが,国立西洋美術館の「ヴィルヘルム・ハンマースホイ展」です。
 
 なにやら,けっこう混んでいるという情報をキャッチしていたんですが,そのとおり,入場時の待ち時間こそなかったものの,か〜な〜り混んでました。 僕はハンマースホイって全然知らなかったんですが,実は有名なのかな?
 
 で,感想ですが,……いや〜〜,行ってよかったです。 久々に充実感ある展覧会でした。
 
 展示作品の多くは,ハンマースホイの妻イーダの後ろ姿だけ,または誰もいなくなった室内を,抑制した色づかいで描いたもので,似たようなモチーフの作品がこれでもかと繰り返されます。 しかし,僕は,飽きるどころか,すっかり魅せられてしまいました。
Hammershoi 感じ方は人それぞれでしょうが,僕にとって衝撃的だったのは,それらの作品が示す(ように僕には感じられた)「徹底的に“音のない”世界」でした。 絵なのに音のことを言うのは変かもしれませんが,絵の中にみなぎる緊張感というか,ある種の濃密な空気感は,静寂と分かちがたく結びついています(少なくとも,僕にとってはそうでした)。 中にはピアノを弾いている場面(これも後ろ姿)を描いた絵もありますが,その作品においても,そのピアノが世界にある唯一の音であり,その音をやはり濃い沈黙が覆っています。 で,その世界の外から観ているはずの我々も,なぜか絵の中の静寂に引きずり込まれてしまうのでした。
 
 途中に紹介されていた同時代の他の画家による作品と比べると,そういった特徴はより鮮明です(その意味では,展示の構成も良かったかも)。 他の画家たちの作品においては,同じように室内における静かな瞬間を切り取っていても,その前後には人々の(音を伴った)日常が想起されるのに対して,ハンマースホイの作品にはそれさえもありません。 動く人間がいない。 音がない。 風もない。 部屋の中にあるのはひたすら濃密な沈黙だけです。
 
 会場の解説には,作品の特徴を表わすために「廃墟」という言葉が使われていて,言われてみれば,近い感じの言葉を探すとそれに突き当たるのかもしれないけれど,個人的にはちょっと違うように思えたのも確かです。 「廃墟」というとどうも「歳月を経て朽ち果てた」ようなニュアンスが感じられますが,目の前の作品はそうではない。 つい最近まで人間の活動があった痕跡はしっかり描かれていて,でも人間的なぬくもりのようなものは既になく,しかもそれらは永遠に失われたような感じ,というか……。 別の言い方をすると,突然自分が人類最後のひとりになってしまって,人間の消えた建物の中に立っている感じ,というか……。 長い人工冬眠から覚めたら,そこは誰もいない世界だった……というとSF的ですが。
 
 これはとにかく,観にいって体験して欲しい……という感じです。 ただ,周りのカップルなんかは少々困惑気味だったのも確かなので(2人で楽しく会話しながら観る,というタイプの作品ではないということでしょう),カップル向きではないかもしれません。
 
 来週末(12/07)で終わりなので,行こうというかたはお早めに。 けっこう混むので,混雑しそうな時間を避けるほうがいいかもしれません。

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最近読んだ記事 (10)

 久々の更新です。 この間,わりと忙しかったのもさることながら,イマイチ何か書こうという気分にならなかったんですが,この3連休思いっきり遊び呆けたおかげか,ちょっとだけ活性化したようです。 ……ってなことで,最近読んだ記事をとりあえず2つばかり紹介します:

普段はニセ科学的なものや医療問題について舌鋒鋭い記事を書く NATROMさんですが,この記事はそういうものではありません。 病院を舞台にした「ちょっといい話」って感じかな。
 
 で,上の記事にトラックバックを送っているこちらも紹介しておきます:
こちらは,へヴィーな話は読みたくないという人には決してオススメしません(←僕が普段ここに書いてるようなものでも「重たい」という感想を持つ人もいるようなので,そういう方への警告の意味をこめて。 正直,僕の書いてることなんて,この記事の前では,ヘリウムガスで膨らました風船のようなもんです)。 でも,僕と同様,これを読んで様々なことを考えさせられる人も多いのではないかと思います。

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