« UDO MUSIC FESTIVAL は伝説になったらしい | Main | 時報の「あの」時計 »

時代はプラチナ微粒子らしい

 以前も紹介したことのある "Do you think for the future" のちょっと前の記事に「プラチナスチーム美顔器?」というのがあります。 去年の秋ごろゲルマニウムの話を書いたこともあって,これを読んで,つい「今度は白金かい!?」と早合点してしまったんですが,「今度は」というか,実はけっこう前から話題になっているようで,相変わらず自分の感度の低さを感じます(^^;。 で,ゲルマニウムのときは,その説明には(ハッキリ言って)意味がなかったのに対して,この白金の場合,状況はちょっと異なっているようです。
 
 まず,美顔器の話をちょっと離れて,記事中に紹介されてる「白金ナノコロイド」を事業化した株式会社シーテックのサイトを見に行くと,なんとタイムリーにも(?)「2006年9月1日をもって、『株式会社シーテック』は『アプト株式会社』に営業譲渡されました。」とあります。 で,そのアプト株式会社のサイトを見に行ったんですが,正直なところ,ワケが分かりません。 「健康に悪影響を与える活性酸素を除去することで、健康促進をはかります」だそうですが,う〜む……。 前身であるシーテックのサイトが同内容だったのかどうかは分かりませんが,例えば,高城史子さん(大阪大学 サイバーメディアセンター)の< 日記のようなもの.>の「8/28 (Mon.)」の項(個別記事へのリンクがはれないので,スクロールして探して読んでください)を見る限り,似たり寄ったりの内容だろうと想像されます。
 
 アプトのサイトにもあるとおり,白金ナノコロイドそのものは,宮本有正教授(東京大学 先端生命科学)の研究がもとになっていて,こちらもアヤシイのかと思いたくなるんですが,「水商売ウォッチング」の中の記事「『還元水』と呼ぶのはもう止めにしないか」を読む限り,研究そのものはかなり真っ当(少なくとも,真っ当だと研究者から判断される程度には真っ当)なものであるようです(もちろん自分で研究の中身を調べて判断すべきですが,またしてもそこまでやってないので,この僕の文章はあくまで「印象」程度のものだと思ってください)。 となると,アプトはどうか知らないけど,シーテックは産学連携ベンチャーの会社だったはずで,それがこんなのでいいんだろうか? 極めてナゾだ……。
 実際,「白金ナノコロイド」で Google検索すると,健康グッズ販売サイトが山ほどヒットしますが,東大教授というありがたいお墨付きがあるせいか,ほとんどのサイトでそれを前面に出しています。 例えば(たまたまGoogle検索で上位に来る)このサイトを見ると,

●白金ナノコロイドとは?

白金ナノコロイドとは、白金を2ナノメートル(ナノは10億分の1)という極小の粒径にした素材。東京大学大学院の宮本有正教授らの研究によって開発されました。CoQ10など、従来、抗酸化作用があるとされる素材で除去できない活性酸素も除去でき、すべての活性酸素に効果があります。また、体内にある限り、半永久的に働きます。


なんて書いてあります(他のサイトもほぼ同じようなことが書いてあることが多いようです)。 アプトのサイトにはここまで踏み込んだ効能は書いてないんですが,シーテックの頃のコピー&ペーストなんでしょうか? またしても出所がよく分かりません。
 
 白金という材料そのものは,触媒作用を持つ物質としてポピュラーだったりするので,「活性酸素を失活させるような何らかの化学反応を促進する」なんて話があったとしても不思議とは言えません。 微粒子になれば,その量に対して表面積に関わる部分が大きくなるので,触媒作用という点では有利でしょう。 ただ,美顔器にしろ,ナノコロイドにしろ,ちょっと気がかりなのは,その人体における移動の仕方や働きがちゃんとは分かっていないこと,それから,その安全性が不明なことです(←これら2つは別個の問題とは言えませんが)。 これらの問題については,上記「『還元水』と呼ぶのはもう止めにしないか」でも述べられています。 要は,白金ナノ粒子の薬理効果にしろ,副作用にしろ,研究はまだ始まったばかりであり,クリアしなければいけない問題がたくさんあるということです。 重要な指摘と思える部分を引用しておくと:
 動物実験で結果が出ていることは確かだとしても、副作用が生じないかといったことは、これからの研究を待たなければならない。なお、筋萎縮性側索硬化症や脳梗塞は、それなりにクリティカルな病気であり、これらに対して治療効果が期待できることを以て、健康飲料や健康食品に白金ナノ粒子を使おうと考えるのは、やはり現段階では勇み足と言うべきだろう。一応はそれなりに健康な人に対して効果が出るほど使うのは、副作用が未確認である以上危険だし、効果が無いほど微量なら、今度は使う意味がない。せっかくまともな薬理作用の研究が始まっているのだから、この流れをゆがめるような製品開発をすべきではないと思う。

(補足として,同じく「水商売ウォッチング」の掲示板のこの発言このスレッドも参照してください。)
 安全性に関する懸念はここなんかでも述べられていますが,例えば,「体内にある限り、半永久的に働きます」と言うけど,これって,もし副作用があった場合,体内にある限り副作用も半永久的に続くということになるわけで,必ずしもうれしくないんじゃないでしょうか。 白金は体内で消化できるわけじゃないんだから。
 
 さて,ではアプトのサイトに安全性について何も書いてないかというと,そうではなく,以下の記述があります:
中でもその一種である白金ナノコロイドは食品のみならず広く使用が認められています。

これ,本当でしょうか?? 財団法人 日本食品化学研究振興財団のサイトにある既存添加物名簿収載品目リストには「白金」はあるけど,いまだに「白金ナノコロイド」はないんですが,情報が古いのでしょうか? ……これは全く僕の想像でしかありませんが,恐らく今でも,状況は "Do you think for the future" の記事「ナノコロイド白金入りガム」の頃と変化なく,許可されているのは「白金」であって「白金ナノコロイド」ではないのでしょう。 この想像が正しいのなら,上の引用部分はちょっと問題ありという気がします(→下の[追記]参照)。
 
 また,山ほどヒットする販売サイトでも安全性についての記述が見られます。 例えば,このサイトを見るとそのものズバリ「安全性」という項目があって,
(前略)
3. 金属蓄積についても、半減期(体内に入れた後50%になる時間)は25.7時間で、約1週間で体外に排出されます。
4. 白金は金属そのもので、シスプラチンという制癌剤に使用され、副作用のある白金イオンとは全く異なります。
5. 医薬部外品申請に必要な全ての安全性実験を終了しており、問題は全く出ておりません。

と書いてあります。
4も若干問題ある表現ですが,それよりも,3と5の情報元がよく分からないのが問題です。 アプトの社長である岡山峰伸さんのブログの中のこのページを見ると,「プラチナナノコロイドが載った学術誌はあるのでしょうか?」という質問に対して「現在論文投稿中です。」と答えていて,それが今年の5月だということを考えると,5に関してはちょっと心もとないように思えます。 更に,同ブログのこの記事を見ると,基本的に行なっているのは動物実験であり,ヒトに当てはまるかどうかは必ずしも確かでないし,(記事中の表現を素直に受け取るなら)25.7時間という半減期を議論できるような検出量でもなさそうです。 また,白金微粒子がどうやって吸収され,どうやって体内に運ばれるのか,吸収率が低いと言ってもどこかの部位に選択的に存在したりしないのか……などなど,次々と疑問がわいてきます。 ……もっとも,同ブログのこの記事では,自社のデータ量に自信を表明しています ……だったら小出しにせずにちゃんと開示して欲しいという気がしますが。
 白金ナノコロイド商品は既にかなり出回っているようですから,アプトにしろ宮本さんにしろ,ぜひデータを示して(どこまで分かっているのか/分かっていないのか)しっかり説明していただきたいと思います。
 
 とまあ,ごちゃごちゃ書きましたが,ネット上の記事をざっと眺めるだけでは分からない点が多々あります。 しかし,どうやら,少なくとも「安心しきって大丈夫」というようなものではなく,長期利用による副作用などのマイナス面がこれから出てきても決しておかしくない,というのが現在の状況のように思えます。
 現時点での僕個人の印象を言うなら,(とんでもない量を摂取しない限り)重大な問題が生じる可能性は低いだろうという感じを持っていますが,これはあくまでマクロなサイズの白金に対するイメージの延長から出てくる「感じ」だけであって,何の根拠もありません。 また,問題もない代わりに,健康な人にはほとんどご利益もないんじゃないかと思わないでもありませんが,それならそれで一過性のブームで終わるだけだから大問題にはならないでしょう。 ただ,その一方で,まかり間違って体内のどこかに蓄積されたりしたらヤだなという懸念も心のどこかにあります。 ……僕自身は今のところ白金ナノ粒子入りの水にカネを出そうという気もないし,だからこそこんな風に軽くみていられるのかも知れませんが,一般論として,プラス面しかないというような話はアヤシイわけで,もし強力なご利益があったら,(摂取量によっては)強力な副作用も覚悟しないといけないんじゃないかとも思います。
 いずれにせよ,こういったものを試そうという方は,まだ不明な部分が少なくないこと,だからもしかしたら大掛かりな人体実験に参加することになるのかもしれないということを頭の片隅において,期待されるご利益とよく比べた上でどうするか決めることをオススメします。 もちろん,今回書いたような話なんか一笑に付して,「そんなことを気にしていたら,アンチエイジングは実践できないよ!」というのも,また1つの考え方なのかもしれませんが(^^;。
 
 
 
[補足]
 「同じ物質なのに,なぜ“白金”と“白金の微粒子”とを区別しなければいけないのか?」という疑問を持つ向きもあろうかと思いますが,実は,それは最近の流行であるナノテクノロジー(ナノテク)の本質部分に直接関わる話だったりします。 ナノテクの重要な柱の1つが,「モノの大きさがナノ(10のマイナス9乗)のレベルまで小さくなると,マクロな大きさのときとは違った性質・機能を持つようになるのではないか」という考え方です(余談ですが,これは「メゾスコピック系」と呼ばれる研究領域とオーバーラップする考え方です)。 この指針に従って何か新しい性質やら機能やらを実現できたとしたら,それは当然もとの(マクロな)物質とは別のものとして扱わなければいけないでしょう。 この考え方に基づくなら,ナノのサイズになったら安全性は再度検討しなおさなければいけないわけで,実際,世界的にナノサイズの微粒子の安全性について,それを実用化する前に調べるべきという動きが高まっています(この動きはヨーロッパが先行,日本は早めの実用化を重視していたため出遅れています。 この記事などを参照)。 ……とまあ,早い話が,(マクロな)白金の性質と白金ナノ粒子のそれとは違うかもしれず,だから,少なくとも何らかの検討を経ないうちは「違うモノだ」という前提で考える必要があるというわけです。
 
 更に蛇足ですが,活性酸素が老化に関与しているという話自体,必ずしも確立したものではないようです。 例えば,Wikipediaの「活性酸素」の項を見ると,最近の研究で否定的な結果が得られていることも述べられています。
 ……それにしてもちょっと疑問なのは,生体において起こる(生存に必要な)化学反応の中には,その過程において酸素ラジカルなどの活性な酸素が生じたり,更にそれが消費されたりすることが必要な場合も多々あるんじゃないか,ということです。 本当のところ,どうなんでしょう? もしそうなら,闇雲に何でもかんでも活性酸素を減らせばいいってもんじゃない,という話が出てきてもおかしくない,という気がするんですが。

|

« UDO MUSIC FESTIVAL は伝説になったらしい | Main | 時報の「あの」時計 »

Comments

分かりやすい説明有難うございます。数十億年の生命の歴史にプラチナコロイドは存在しない訳で、それを食べて吸収されどの様に使われるのか知りませんが、おそらく数年のスパンでは結果は出ないでしょう。数十年の後に天秤がどちらに傾くか結果が出てくる事になると思います。

Posted by: 正和 | January 04, 2007 at 20:43

正和さん,ようこそ。
レスが遅れてすいません。

確かに,そういうものかも知れませんね。

で,仮に数十年後に何か分かるとしても,現在そういうものだと言って売ってるわけではないですよね。あたかも何か確定的なご利益があり,なおかつご利益しかないような宣伝文句で売ってるわけです。……まあ,良いことばっかり言うのは宣伝だからだという話もあるかも知れませんが,今どきは,(むしろまともな商売なら)宣伝にもある程度のエクスキューズをつけていたりするもので,それすらないというのは,ホントに「アヤシイ健康ビジネス」の仲間のパターンにハマっているように思えてしまいます。しかも,それが「産学連携」の結果としてのビジネスというのだから,何とも……。

また,「天秤がどちらかに傾く」というような単純な結果ではない可能性も(十分に)あります。本文中でも書きましたが,スゴク良いご利益があったら,それなりの副作用があってもおかしくはないでしょうし。まあ,白金の含有量も大したことないみたいだし,吸収率も低いみたいだし,個人的には,何事もなく忘れられていくのかなと思ったりしますが,これはあくまで野次馬的な予想にすぎません。

……と,あんまり批判的なことばかり書きたくはないんですが,白金ナノコロイド商品については,今のところ,褒められるような点が見えない,というのが正直なところです。

Posted by: JUN-K | January 08, 2007 at 01:20

白金ナノコロイドの安全性を考える科学者の会

Posted by: 白金ナノコロイドの安全性を考える科学者の会 | December 10, 2009 at 14:35

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/38221/11977815

Listed below are links to weblogs that reference 時代はプラチナ微粒子らしい:

» プラチナコロイドに要注意 [事象の地平線::---Event Horizon---]
 ちょっと調査しないといけないネタになってきつつあるのでメモ代わりに書いておく。 JUN-Kさんのblogのエントリ「時代はプラチナ微粒子らしい」に関連して。 今度は、東大の宮本教授がやってる産学連携発の水商売が出てきた。「活性酸素を消去する」というふれこみの水...... [Read More]

Tracked on October 09, 2006 at 01:24

» 白金ナノコロイド 毒にも薬にもならない方がよいビジネス [ひろしこむ 出張Blog]
一般法則として、バイオベンチャーはハイリスクだ。 理由は明快で、医薬品が対象であれば、効用のある新薬の発見がバクチな上、有効性が確認されてからの安全性の検証に途方もないカネと時間がかかるからだ。 だから、過去経験的には、不況の時にバイオベンチャーは流行る。バブルとして。そして、この分野で予測可能なのは、計測器、試薬、バイオインフォマティックだけなのだ。 だが、有効性と安全性という観点をかなぐり捨てれば、この分野にはもう一つの突破口がある。「化粧品、そして健康食品」。すなわちグレー領域だ... [Read More]

Tracked on January 10, 2007 at 15:55

» 美顔器 [美顔器]
美顔器はお使いですか? 美顔器のことを調べてみました、効果はあるのでしょうか? [Read More]

Tracked on May 27, 2007 at 03:37

» 白金ナノコロイド化粧品の口コミ・感想・トライアルキャンペーン [白金ナノコロイド化粧品の口コミ・感想・トライアルの紹介]
希少価値高い「プラチナ」をナノ化することで、お肌にもっともいい成分「ナノプラチナ」が誕生しました。肌老化・光老化の原因である“活性酸素”を除去。またそのチカラは半永久的にお肌を保護します。 ※お肌のお悩み・年齢問わず「ナノプラチナ」はご使用いただけ、洗顔後はワンステップケア。大切なお肌をいつまでも若々しく保ちます。 ... [Read More]

Tracked on June 10, 2007 at 22:35

« UDO MUSIC FESTIVAL は伝説になったらしい | Main | 時報の「あの」時計 »