牛乳が毒だと誰かトクするのかな?
怒涛の(←当社比)ライヴ月間が終わり,ちょっと一息ついたという感じです。 来場の皆さん,ありがとうございました。
それはそうと,なぜか最近「牛乳有害説」なるものが広まってるようですね。 特に気にしたことがなかったんですが,考えてみると確かに比較的最近,新聞の1面下の広告に「牛乳は毒だ!」みたいな感じの題名の本の広告があった記憶があります。 (関係ない話ですが,1面の下のほうにある本の宣伝って,どうしてああもアヤシサ満開なんでしょうか。(^^;)
ちょっとだけ調べてみると,どうも「牛乳有害説」というのは,欧米ではこれまでも何度か出てきたことのある説らしく,特に目新しい話というわけではないようです。 この説を唱えている人の中には食品や医療・健康についてなんらかの専門性を持った人も含まれているということらしく,何かの根拠があるのではないかと思いたくなるんですが,しかしながら,結局のところ今に至るも専門家の間の主流の意見とは到底言えない,ということのようです。
で,何がきっかけかは知りませんが,日本国内でもなぜかジワジワと広がっているみたいで,Google で検索すると例えばこんな記事がひっかかります。 この記事にも記載がありますが, 2000年に「月刊テーミス」,2001年に「新潮45」,と相次いで牛乳の摂取を批判的に扱った記事が掲載され,農林水産省が両社に抗議する事態になっています。
お上の言うことを鵜呑みにする権威主義的なヤツと思われるかもしれないけれど(あるいは,国の陰謀に気がつかない愚か者ってとこか(^^;),これら申し入れの文章は,主要な論点のかなりの部分をカバーしているように思うので,気になる人は1度読んでおいて損はないでしょう。 (特に,牛乳の摂取を控えるべきというのが米国において国家的なコンセンサスになっているかのような印象を与える両紙の記述が間違っているというのは,米国の一次情報を読みに行くのが面倒な僕にとっては,有害説の論拠の主要な一角が崩れるという意味でポイント高い部分のように思えます。)
上で例として挙げた「世論時報」の記事なども(この記事を挙げたのは,たまたま検索の上位にきたものの中でも良くまとまった文章だったからで,他意はありません),相関があることと因果関係があることとの(恐らくは意図的な)混同や,無関係な問題をあたかも関連があるかのように見せる話の展開など,かなりの無茶を重ねた内容になっていて,さすがに真に受けろと言われてもムリがあります。 しかし,残念ながら(?),今回日本語で読めるものを部分的にざっと見た範囲(さすがに,あんまり時間をかけてられなかった)では,牛乳が有害だと唱える人たちのロジックはほぼ似たり寄ったりのように思えます。
また,(今回見た範囲では,ですが(←シツコイ))有害説に賛同する専門家の人たちというのは,どうやら多くは菜食主義を薦める立場の人たちのような感触があります。 まあ,牛乳に含まれる脂肪分なんかを問題にする立場と菜食を薦める立場とが結びつくのは自然な気もするわけで,この手の言説に触れる場合には,こうした結びつきにも注意を払うべきかもしれません。
……と,こういった要素を次々と剥ぎ取っていくと,結局のところ「有害」という話はどこかに消えてしまって,残った否定的なニュアンスを持つ要素は「牛乳で摂れる栄養素(カルシウムなど)は他の食品でも摂取可能で,体質的に合わない人までもが無理して飲むことはない。 だから,牛乳を絶対視するな。」という,ある意味あたり前のことだけになってしまうように見えます。
ということで,またしても「少なくとも現時点で気にするような話ではなさそうだ」という結論になってしまいました。(^^; ま,当然か。
それにしても,こういうのを熱心に広める人たちを見ていると,もしかして,なにか「不自由になりたい」という潜在的なニーズがあるのかな? なんて思えてきます。 「仕事のときには背広を着といたほうが無難」みたいに,多少のシバリがあるほうがある意味で楽な場合があることは分からなくもないとはいえ,基本的には,不必要な不安や不必要な制限なんかないほうが,食生活は楽しいと思うんだけど……。 もしかして,それでトクする人がどこかにいるんじゃないか,などと穿った見方の1つもしたくなろうというものです。
追記(2006/03/03)
ろくに調べずに不適切な例をひいてしまったので,その部分を削除しました。 やはりちゃんと調べるべきですね。 反省。 指摘してくれた方には,不快な思いをさせたことをお詫びすると共に,指摘に感謝します。


Comments
ここには初カキコです(^^)v
職業柄牛乳にはかなり精通しておりますが。。。。
この記事
「牛乳を飲みすぎることが、逆に骨をもろくし、骨折を招いているのです。それが証拠に、世界中で最も牛乳を飲んでいるノルウェー人の骨折率は日本人の5倍」
にはびっくりさせられましたー
本当だとしたらかなり危機でしょ!?
みの○んたさんの某TV番組では
「ヨーグルトは花粉症に効く」
とやってますからね~
ご存知の通りヨーグルトは牛乳から作られるものですからね。
もしこの話題がお○いっきりテレビで放映されたら。。
あぁ、Hasemanは喰っていけないでしょうね…
Posted by: haseman | March 25, 2006 at 01:18
どもども。
精通している人にとっては,特にオタオタする要素はないんじゃないでしょうか。
「ノルウェー人の骨折率は日本人の5倍」が仮に本当だったとしても,そのことと牛乳とを結びつける論理は(少なくともあの記事の範囲では)ないわけで,今のところ僕には印象操作以上のものには見えないです。 特に危機なんて思う必然性はないんじゃないか ……なんてあたりのツッコミは長くなるので省略したんだけど,いまいち分かってもらえなかったか。(^^;
(文章が長くなることと詳しく書くことと,どちらを採るか,毎度のことながら悩むところです。)
それはそうと,リンク先の記事に「それが証拠に」なんてどこにも書いてないよ。 証拠になるようなものではないから当然そんなこと書けないわけで,書いてる人もそこは分かってるから,そういう書き方は避けてわざと「印象だけを植え付ける」ように書いてるんでしょう。
「みの」以下の後半のコメントはちょっと何を言いたいのか分からないんだけど(申し訳ない),確かにテレビでセンセーショナルな採り上げかたをされたら困ったことになりそうです。 とはいえ,牛乳の場合,(記事中の農林水産省のように)国も業界団体も黙ってないだろうという気がするから,そこそこ大丈夫かな。 それよりも,今回ちょっとネット検索したりして驚いたのは,牛乳有害説が予想以上に広まってるという事実です。 口コミ効果みたいなものなのかな。 そういうののほうが,ある意味,テレビよりも手ごわいかも知れません。
Posted by: JUN-K | March 27, 2006 at 23:44
上記コメント訂正です。
「それが証拠に」という部分は「新潮45」の記事のほうにありましたね。 上のコメントを書いたときはなぜか「世論時報」の記事のことばかり考えてました。 いやはや,全く申し訳ない。 それにしても,これはかなり乱暴な物言いという気がします。
Posted by: JUN-K | April 25, 2006 at 23:02
古い記事へのコメントを失礼します。
ノルウェーの牛乳消費量と骨折の人数の関連性は、例えば、一定の年齢層を対象に「年齢と血圧の関係」と「年齢と年収の関係」に置き換えて考えると……、
「年齢が高ければ高いほど血圧は高くなる傾向にある」
「年齢が上がれば年収も上がる傾向にある」
というような例がある場合、統計的には
「血圧が上がれば年収が上がる」ということが数字の字面から現れてしまうのです。
これはある意味数字のマジックみたいなもので、これは統計分野が使い物にならないのではなく、不適切な利用をしてしまっただけのことで、「ノルウェーの牛乳消費量」と「骨折した人の数」以外の関係を見ないと判断を誤る恐れがある、ということになります。
Posted by: まなぶ@。 | June 09, 2006 at 01:25
まなぶ@。くん,ようこそ。(^o^)
補足説明ありがとさんです。
ほぼ説明してもらえたとおりで,本文中で「相関があることと因果関係があることとの(恐らくは意図的な)混同」と書いたのは,そのあたりのことが念頭にあったんですが,長くなるので具体的な内容には踏み込みませんでした。 こうやって補足してもらえるのは,ありがたいかぎりです。
で,せっかくなので,(まなぶ@。くんへの返事の場を借りて)ちょっと付け加えさせてもらうと,
> 「血圧が上がれば年収が上がる」ということが数字の字面から現れてしまうのです。
この「血圧が上がれば年収が上がる」という言い方は「因果関係がある」とも受け取れる言い方なので,注意が必要です。
言うまでもないことでしょうが,まなぶ@。くんが挙げている例から得られる(可能性のある)結論は,「血圧と年収には正の相関がある」ということに過ぎないのであって,「血圧上昇という原因が,年収上昇という結果を引き起こす」というような「因果関係」が統計から得られるわけではありません。
(因果関係は,別の手段によって検証されるべきものです。)
ところが,わざとこの点を曖昧にして,「血圧が上がれば年収が上がる」というような,因果関係とも受け取れる言い方を採用することによって,あたかも「因果関係がある」という結論が得られたかのような印象を読み手に植えつけることが出来るわけで,本文で紹介した記事では(書き手がどこまでこれを意図的に行なっているのかは分かりませんが)このようなレトリックで「牛乳の摂取」が「骨折率が高いこと」の “原因” であるかのように仕立て上げられているのです。 (この印象そのままに受け取ってしまった人は,ある意味「まんまと,してやられた」ということになるかも知れません。)
この手の論理のすりかえは,根拠の乏しい説を強引に展開する場合によく出てくる(僕もよくだまされる(^^;)ので,読む側としては気をつけていて損はないと思います。
また,書く側としては,書こうとしている内容や論理を正確に伝えようとするなら,こういった誤解を招く表現は出来るだけ採らないほうがいいだろうと思います。
……っつーか,今回の場合,そんなレトリックのこと以前に,骨折率のデータの比較というのが信用できる話なのかが,まず検証されるべきだろうと思うんだけど。
といったところで話を元に戻して。
この BLOG は「日記」という感じではないので,古い記事だろうとなんだろうと,コメントは歓迎ですよ。
実のところ,なんも反応がないと,ひとりで海に向かって叫んでるような気分です(^^;。 ひとりで海に向かって叫ぶのも何回かは楽しいかもしれないけど,じきに飽きてしまいますからね。 反応があるのはウレシイことなんです。 ホントに。
ということで,今後とも,よろしく〜。
Posted by: JUN-K | June 10, 2006 at 02:07