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Larry Carlton LIVE

firewire Larry Carlton のライヴに行ってきました(Blue Note Tokyo)。
 僕が見たのは初日の 2ndステージ,客席は程よく埋まった感じでしたが,遅く行ったにもかかわらず,ベーシストの真ん前のテーブルに進出することに成功,Carlton との距離も3メートル以下という感じでした。
 
 今回の来日メンバーは新譜 "FIREWIRE" (左図)の曲をやるための編成だったようで,管楽器は Sapphire Blues Band から tb と sax の2管だけを連れてきていました。 曲目はほとんどが "FIREWIRE" からのもので,Carlton は2本の ES335(ティーバーストのものとタバコサンバーストのもの)といかにも古そうなレスポール,それからいつものアコースティックギターを使い分けていました。
 
 残念ながら,この日の Carlton は好調とはいい難いコンディションだったようで,しきりに左手を気にしていました。 昔の曲から唯一セレクトされた "Strikes Twice" も,冒頭のテーマが弾き切れなかったりして,ビックリしました(もっとも,曲が進むにつれて修正されていきましたが)。 あそこまで弾けない Carlton を観たのは初めてで,本人も曲が終わった後 "Too fast" などと言い訳ともつかないジョークを飛ばしていました。(^^;
 
 さて,今回の眼目である "FIREWIRE" からの曲ですが,これが意外なほど(?)楽しく聴けました。 周知の通り,前作のブルース・インスト路線から更に進めて今作は全編ロック・インストという驚きの内容だったわけですが,アルバムを聴いたときの印象は,僕個人としては正直イマイチだったので,やはりこの手の曲はライヴ演奏でこそ映えるということかもしれません。
 で,彼にしてはハードエッジなロック・インストがずらりと並ぶ中,今回の(個人的な)山場の1つは後半のアコースティックギターに持ち替えての曲でした。 もともと彼のアコースティックギターの音は,もろにアコースティックというよりはエレキとアコースティックの中間というか,高域にアコースティックギター的な輝きを持ったエレキ(サステインなんかはエレキ寄り)みたいなところがあり,これまでなら,それはそれでいいけれど Carlton はやっぱりエレキの方がいいな……みたいに思わないこともなかったんですが,この日のアコースティックギターは彼らしい美しさにあふれた素晴らしいものでした。 もう1つの山場はアンコール後に登場した8分の6のブルースで,これはこの日最高の演奏で大いに盛り上がりました。
 
 ところで,Lee Ritenour なんかとの対比でよく「Carlton はブルージー」みたいな言われ方をすることが多く,それは確かにその通りだと思うんですが,これは彼がいわゆる「ブルースギタリストである」という意味でないのは明らかだと思います。 上で書いたように,ライヴで必ず披露されるブルースの演奏は強烈に素晴らしいものではあるんですが,それ1色になってしまうのは個人的にはちょっとカナシイ。 ブルースだけだと,彼の曲の良さやアドリブでのメロディー感覚の素晴らしさ,それを絶妙なフィーリングで“歌う”こと……といった,僕も含めてみんなが感じている「Carlton の素晴らしさ」のごく一部しか見えないことになってしまう。 今回アコースティックギターの演奏でことさら感動したのも,あの曲では僕が彼に期待する(今回の他の演奏曲では見えにくい)素晴らしさが発揮されていたように思えたから,のような気がします。
 
 
 近年続いている Carlton のブルース回帰もそうですが,Jazz/Fusion の世界を彩ってきたアーティストの少なからぬ人たちが,原点回帰色を強めてそれ一辺倒になってしまったり,スタンダードナンバーに走ったり,省エネ大御所路線になってしまったり……というのを目の当たりにするのは,正直,カナシイものがあります(一方で,Gentle Thoughts リユニオンみたいな企画にも違った種類のカナシさを感じないでもないのですが,それはまた別の話です)。 彼らも年をとってしまったということなのでしょう。 ……もちろん,多くの場合,それらの演奏も素晴らしいものではあります。 彼らにだって,好みの変化はあるでしょう。 でも,これらの変化からは一様に,かつては持っていたはずのある種のアグレッシヴな姿勢が衰退したような感じを受けることを否定できず,なんというか,ちょっと悪い言い方かも知れないけど「(これまで実存がどうとか言ってた人が)年をとったら急に信心深くなって念仏を唱えだした」みたいな状況に相通ずるような印象を拭えません。 これもまあ止むを得ないことなのかもしれませんが,しかし,彼らがこれまで築き上げ多くの支持を集めてきた音楽性を封印してしまったのだとしたら,(それらを愛してきたものの1人として)失われたものは大きいと言わずにはいられない。
 一流の名をほしいままにするアーティストたちをもってしても,進化し続け新しい音楽を提示し続けるというのは難しいことかもしれませんが,せめて,これまでの自分の音楽を封印したりしないで欲しい……と,身勝手な1人のリスナーとして強く思う今日この頃です。

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